龍神沼の自由帳

気が向いたら更新しますわ

突撃巡洋艦最上

 突撃巡洋艦とは、最上型巡洋艦の存在が明らかにされたとき、その艦型により受ける印象から自然と国民に広まった呼称である。3連装の主砲3基を階段状に艦前部に集中配置した特異な艦型は、海軍関係者のみならず一般国民にもその戦術思想をはっきりと理解させるものだった。水雷戦隊の先頭に立ち、その集中された砲力と強靭な防御力を持って敵艦隊に切り込んでいく、ジュットランド海戦の戦訓に基いて構想された新世代の水雷戦隊指揮艦としての全てを具現化した艦容は、まさに突撃巡洋艦としか表現できないものとして存在していた。
 最上型の特徴として、その特異な砲配置のほか、最高速37ノット、14ノットで13000キロを超える航続距離という高機動性、主砲塔前面及び弾薬庫には対20センチ砲防御、砲塔側面及び主要部には対15センチ砲防御を施した防御性能、加古に続いて採用されたシフト式の機関配置、高雄型の巨大になりすぎた艦橋から一転してコンパクトに設計された艦橋などがあげられる。また主砲塔が無く航空兵装も持たない為フラットになった艦後部のスペースを有効利用する為、大型輸送艇4隻を収容発進できる設備が設置され、その高速をもって緊急時の輸送などに活用された。対空兵装は89式12,7センチ高角砲を片舷連装3基、両舷で合わせて6基12門、さらに96式25ミリ連装機銃を8基16丁装備し、中型空母並みの火力を持っていた。
 最上型に施された重防御は、雷装・航空兵装を廃止し主砲を9門に抑えても、やはり8500トン排水量の枠内にに抑えることは無理だった。計画当初から条約明け後の改装を視野に入れ一部装甲や装備を後日設置することで、計画の枠内での完成を目指してはいたが、結局完成時の排水量は9500トンが予想され、さらに第4艦隊事件の影響を受け艦体強度の見直し等が図られた結果、竣工時の最終的な基準排水量は11000トン近いものになった。その後、条約明け後の装備の追加等の改装の為排水量は12000トンを超え、結果最高速力は35ノットまで下がったが、実用上問題なく太平洋戦争ではその防御力、機動力に加えて強力な対空兵装をもって、*1戦場を縦横に活躍することになる。

*1:その輸送力も実戦で大いに役立つことになる。