龍神沼の自由帳

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【第一機動艦隊】覇者の戦塵"ブーゲンビル逆上陸戦"其の4【第58任務部隊】

 (第4章)呂40−トラック
 4月12日ハワイ西方での哨戒任務の為クェゼリンを出航した呂40は、15日ハワイウェーク間において護衛空母を含む中規模の米艦隊に接敵する。艦載機による夜間攻撃を凌いだ同艦は、更にこの艦隊との接触を続け、この艦隊が多数の高速給油艦工作艦等で編成された支援部隊であることを探り出す。この情報を受けた軍令部から、トラックの連合艦隊司令部に向けて中部太平洋方面で米機動部隊が作戦中との連絡が入る。対応に追われる連合艦隊だったが、この時点で主力部隊である第一機動艦隊は沖縄周辺海域に集結訓練中で、トラック方面には旧式戦艦や船団護衛用の中小艦艇などが在泊しているのみで、米軍には基地航空機によってしか対処できない状態だった。日本軍の哨戒網にいまだ捉えられない米機動部隊は、その規模さえ不明でどこに向かっているのかも類推に頼るしかなかった。第一機動艦隊は直ちに出撃体制が整えられ、トラック方面に向けて進撃を開始したが、トラックまでは巡航速力で5日あまりの航程を要し、米軍がどこに向かおうと、それを捉えることは不可能に近かった。そんな中トラックの根拠地部隊は航空哨戒を強化していたものの、トラックの守備部隊は通常通りの警戒態勢であり、連合艦隊が在泊艦艇をパラオ方面に避退させているにもかかわらず、在泊船舶等に対して通常のスケジュールでの出入港荷役の指示を続けていた。
 ニュージョージア島攻略作戦の為トラックに集結していた海兵隊連合機動部隊は、この一連の動きの中で半ば放置された存在となっていた。この時期蓮見大佐は、米軍戦力のソロモンニューギニア方面での不活性化の隙を突いての攻勢作戦を、各方面に積極的に働きかけていた。第一機動艦隊の投入によるソロモン方面での反撃作戦の目途がほぼ付きかけたところでの突然の米機動部隊の動きに、海兵隊司令部は混乱していた。蓮見大佐が海軍通信部隊から急ぎ臨時司令部棟に取って返したところから事態は急速に動き始める。通信班の無線傍受や、補給艦隊の規模や所在海域を分析した通信隊が出した結論は、米機動部隊の目的がトラックの基地機能の破壊にあるというものだった。米機動部隊の規模は3群に分れ、空母10隻前後を含む総数60隻近い大規模な艦隊で、艦載機の数は700機を上回るものと見積もられ、周辺の航空兵力をかき集めてもトラックを守るので精一杯、米艦隊に対する攻撃を実施した場合、ほとんど戦果を上げることなく中部太平洋方面の航空戦力は、当面回復不能の損害を出すとの分析が出されていた。米軍の攻撃は2〜3日中にも開始されるものと予想された為、海兵隊輸送のために集結していた艦艇・船舶は直ちに護衛艦艇と共にトラックを離れパラオ方面に避退するよう指示が出された。矢継ぎ早の指示を出した後、蓮見大佐は参謀達に後を任せ足早に司令部を立ち去った。翌日トラック泊地からほとんど全ての艦船が姿を消し、早朝から多数の航空機が哨戒飛行に飛び立っていった。そして日が高くなる前から、上空警戒の為の戦闘機が飛び交う中多数の航空機がトラックの各飛行場に飛来しはじめた。