龍神沼の自由帳

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第2次上海事変での海軍の戦闘2

 上海方面では、当時日本海軍が保有していた戦闘可能な航空母艦のほとんどが実戦に投入され、その実用性が試されている。上海における戦闘勃発時、同方面には飛隼、龍驤からなる第一航空戦隊が展開中で、中国空軍による上海租界爆撃に対して哨戒中の艦戦が迎撃戦闘を行っている。その後内地から増派された加賀、蒼龍からなる二航戦とともに航空制圧戦、陣地攻撃、後方の兵站への爆撃など多くの戦闘に投入された。この戦いで空母艦載機は、戦闘機が九五式艦戦及び九六式艦戦、攻撃機は九六式艦攻、急降下爆撃機は九六式艦爆がそれぞれ戦闘に参加している。また当時正式採用されたものの同時期に開発された九七式艦攻と性能的に大差がないということで量産が見送られていた九七式艦偵の試作機2機が、飛隼に搭載され偵察任務で良好な運用成績を残し、その後発動機の換装など機体の改修を受けた上量産化されている。
 上海から長江にかけての沿岸部では、低喫水の中小艦艇が哨戒任務、支援砲撃、掃海作業などに投入され活躍している。対艦艇水上戦闘は小規模で不活発な中国海軍相手ということで発生していないが、不審船舶などへの臨検任務の際威嚇射撃や逃走する舟艇への攻撃などは頻繁に記録されている。この事変の期間中失われた海軍艦艇は一隻もないが、中国軍による空爆や陸上からの銃砲撃のほか、接触・衝突事故などにより多くの損傷艦艇を出している。その中でももっとも大きなものは、11月に空母飛隼が夜間着艦作業中に付近を航行中の陸軍徴用の貨物船に衝突され、左舷中央部を大破した事故である。この事故の後同艦は内地で修理改装工事を行い、小型ながら有力な攻撃力を持つこととなる。
 そのほかこの方面には10隻を超える巡洋艦が陸上戦闘の支援の為投入されたが、上海方面での戦闘が下火になるとその多くは活躍の場を失い内地に帰投している。戦艦については当時多くの艦が改装工事の途上にあったことや、戦闘力が戦場の状況に対して過大であることから一隻も参加していない。