龍神沼の自由帳

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上海事変の戦訓2

 上海事変の拡大に伴い陸戦隊は更に戦力を増強、膠着する戦局の打開を企図し、天龍・龍田の搭載上陸用舟艇による敵陣後方への舟艇機動作戦を実施した。中国軍の意表をついたこの作戦は戦術的奇襲となり、作戦方面における中国軍の潰走に繋がった。しかしその一方、内火艇を改造した上陸用舟艇は、重火器の揚陸や重武装の兵員の急速上陸においての能力不足を用兵者から指摘された。
 上海事変は拡大する満州事変を覆い隠す為の策謀として一部日本軍関係者により引き起こされたものであった。しかし各国の治外法権区域である租界が大きな部分を占め、ために日本軍にとっては戦力や戦術面において大きな制約のある上海という都市は、中国にしてみれば日本国を政治的軍事的に打ち負かす大きな可能性を持つ戦場になる、という認識を上海事変に一貫してかかわった海軍陸戦隊及びその母体である日本海軍はもち始めた。この認識は陸戦隊の拡大につながり、また戦術面や運用面、さらに装備する兵器に於いても検討が加えられていく。即応戦力の増大と緊急展開力の強化が海軍に求められていた。そしてこの動きは陸軍に於いても同様なものがみられ、やがてその変革は第二次上海事変において結実する。