龍神沼の自由帳

気が向いたら更新しますわ

勝ちすぎの是正(まだ新刊読んでない)

 脳内星取表で日本軍に勝たせすぎたから、バランスとるために米軍を無敵モードにする。結果設定に無理が来てしまい、無謀な作戦でも無敵モードでごり押しする。読者は今までの流れから日本軍の善戦・勝利ムードを期待していたのが、いきなりフラストレーションのたまりまくるストーリーを連続して与えられることになり裏切られたような気持ちを抱き始める(たいていの読者は今ここらへん)。
 この脳内星取表って言うのが曲者、たいていの仮想作家は基本的に日本の最終的勝利ラインを、戦術的勝利レベルまでとしている。戦略的には旧植民地の放棄、満州国の措置についてはソ連を除く連合国への統治権の移管、制限された軍備の保有という条件下での米国の衛星国としての独立の維持、というレベルが日本に許される最終的な勝利ラインとなっている。たいていの仮想戦記では結末をそこまでも持っていかない場合が多い。よくて条件付降伏、ほとんどの場合は戦場では勝っているのにいつの間にかジリ貧、気が付いたら連合艦隊は無謀な突撃で壊滅、結局数次の海戦で大ダメージを受けていたはずの米軍がその生産力により戦力を回復どころか倍増させて日本を屈服させてしまっちゃう。*1
 そこら辺上手いこと日本に勝たせながら、最終的に読者を納得させながら、史実並みの条件で戦争を終らす、これ無理なんです。昭和17年、日本軍の錬度がバリバリの状態でミッドウェイ海戦で日本軍に勝たせてしまう。ミッドウェイの維持で日本軍大損害とか良くあるけど、それは戦局に大きな影響を与えるものではない。ここからFS作戦で補給線が延びて日本軍苦戦とか、普通その前にニューギニアを何とかしようとするはずだ。その辺MO作戦を再開するのなら10月ぐらいになるだろう。一方でインド洋での第2次攻勢が6月末から実施されるのはミッドウエイに勝っていれば既成事実。まずインド洋だけど、ここで通商破壊作戦が再開されるとアフリカ戦線に影響が出てくる。エル・アラメインに戦力を集中してドイツ軍を撃破する英軍の作戦に綻びができる。さらに英軍がインド洋に護衛戦力を抽出することは、地中海や大西洋での船団護衛戦力の弱体化につながり、スターリングラードでのソ連軍の反攻にも影響が出てくることも考えられる。ニューギニア戦線も日本軍の母艦戦力がピークを迎える17年の10月辺りだと、戦力の集中が図れれば米機動部隊の抵抗を排除した上で、ポートモレスビー方面の航空戦力の撃滅ぐらいまでは実現できる力が日本にはある。それ以前に米軍がガタルカナルに反攻をかけた場合も、母艦戦力比に勝る日本軍が制海制空権を握ることはほぼ間違いない。その結果として、米機動部隊が再建され戦力を充実する昭和18年末までは、日本海軍が戦場におけるイニシアティブを握り続けることになるだろう。ということはインド洋においても日本軍の戦力展開が恒常的に続けられることになり、潜水艦戦力だけでなく水上戦力や空母機動部隊がインド洋で活動するならば、ヨーロッパアフリカ戦線への影響もかなりでてくるはずだ。この辺の展開を無視し、太平洋の米軍戦力の増勢だけでストーリーを紡ぐ仮想作家が多すぎる。
 どこの誰とはいっているが、ほとんど無傷の空母機動部隊を、日本が国家として守勢を基本戦略にしているからと、一年半近く遊ばせてしまうとかわけのわからんことをした挙句、戦力的に優勢な時点で米軍の攻勢に戦力を小出しにして、わざわざ勝利できるチャンスを逃がしてしまうなど読者を馬鹿にしてるのか。その後も機動部隊や基地航空兵力が戦力を残しているのに退却する米軍になんの手出しもせず見送るとか、はるばるマーシャルから空襲をかけるしかできない米軍にびびって、半年間グアムの航空戦力の再建を放棄し続けるとか、敵機動部隊が根拠地から長駆日本勢力圏の硫黄島に空襲をかけるのを、奇襲されるまで気が付かない無理やりさ加減とか、戦艦による日本強襲とか、航続距離を無視した強襲とか、空母4隻に戦闘機だけを載せたって、一度に飛ばせるのは150機ぐらいまでだろうがとか、3隻に減ったら100機ぐらいじゃないのとか、丸一日以上戦い続けるんだから中の人も疲労するだろとか前振りしている割には影響なさそうじゃんとか、一度に2百機も4発爆撃機集中できんだろうとか、それ以前に燃料タンク増設せんとまずいだろとか、偵察タイプと勘違いしてんじゃねーのとか、素直にB−29投入しろよとか、もっと考えろよ、素人に突っ込まれるような小説書くなよ、いやほんと。
 4巻、やばそうだよ4巻。

*1:軍艦や航空機はいくらでも作れるかも知れんが、中の人まで倍増とかマニュアル信奉過ぎると思う