龍神沼の自由帳

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もし日本が中国に勝っていたら

もし、日本が中国に勝っていたら (文春新書)

もし、日本が中国に勝っていたら (文春新書)

まあ言ってみたら中国は焼け太り国家なわけです。で、日本が中国全土を手に入れていたら、日本も中国に取り込まれてしまっていただろう、っていうのがこの本の結論なわけで、まあそっちのほうが中国共産党一党独裁でこのまま放っておけば、国が潰れるだけでなくその国土まで再起不能になってしまいそうな現状よりははるかにましだったんじゃないの、と裏で主張しているみたいです。実のところ日本に本気で中国を征服する気はなかったわけで、市場としてあるいは欧米に対抗するための同盟国としての価値を中国に見ていたんだと思っています。日支事変は、満州との緩衝地帯としての華北の安定化を望む軍部と、中国市場を確保するという部分での上海を中心とした排日運動への対処をのぞむ資本の論理という二つの違った側面からの日本のアプローチが、日本敵視政策によって国民の支持を得ようとする蒋介石政権によって利用され、結果的に泥沼の戦争に引きずり込まれたものであって、日本が望んで引き起こしたものではないわけです。仮に日本が中国全土を制圧したとしても、その場合は日本に友好的な政権を樹立し直接中国を支配することは無かったでしょう。
著者は触れていませんが、中国に侵入して中国を支配した外来部族と日本では大きな違いがあります。それはモンゴル族にしろ満州族にしろ文化的に中国に大きく劣っており、それぞれが持つ軍事的優位によって中国を支配したのに対し、当時の日本は軍事力だけでなく文化的にも中国に対して優位に立っていたことです。中国に侵入した外来部族国家が文化的劣位性よって中華文明に取り込まれてしまったのに対し、仮に日本が中国を支配下に置いた場合、逆に日本支配下の台湾や朝鮮で起こったことが中国で起きた可能性のほうが高かったのではないかと思います。おそらくその結果として中華文明は解体され、地方ごとに独立した複数の国家が中国大陸に存在することになっていたのではないでしょうか。