龍神沼の自由帳

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円安の理由

さっき洗濯物干しながら考えてたんだけど、今世界の中央銀行は協力してドルの下落によるアメリカ経済のリセッション突入を防ごうとしているんじゃないだろうか。たとえば日本はユーロ売り、EUは円売り、みたいな感じで、ちょっと目には動きが見えないようにして。
(ドル下落の影響)
ドルが下がるということは、アメリカの購買力が下がるということで、世界の主要国の大半が対米貿易に大きな部分を依存している中でのドル価値の下落は、アメリカの不況のみならず世界経済のリセッションに直結する。新興市場が、とかEUに経済の重点がとか寝とぼけたことを言っている論者が多いが、世界最大の市場を持つアメリカの代わりをこれらの国に求めることのナンセンスさは、ちょっと考えれば誰でもわかることだろう。だいいちBRICSEU諸国自体が直接間接にアメリカ経済に依存している部分が大きいのだから、アメリカが不況に陥ればこれらの諸国も同時に不況に支配されるだろう。
(ドル下落によるアメリカの復活?)
ドル安でアメリカの産業が復活とかいう夢を語る人もいるが、競争力の無くなった産業は一部の特化した企業を除いて退場してしまっている。競争力を持つアメリカの企業は既にグローバル化した生産体制をとっており、工場自体アメリカ本土にはほとんどもっていない。故にドル安が競争力に影響する企業とかいっても農業や軍需産業や航空機産業ぐらいのもので、それらの企業はもともとが国際競争力が不足していたということはない。アメリカに進出した日欧の企業による逆輸出を想像してみたが、国産化比率というかかなりのパーツが国際的な水平分業によって調達されていることもあり、それらの企業にとってもドル安は対岸の火事ではないと考えられる。夢を語りたい人はアメリカの競争力の復活を語るその前に、アメリカが最も国際競争力を誇っていた金融産業が今回のサブプライム問題によって、一部の企業を除き軒並み大きな痛手を蒙っていることを考えて見たほうがいいのではないのか。
サブプライム問題への対応)
今回続いているサブプライムローンによるクレジットクランチ問題は、サブプライムローンの焦げ付きの金額の大きさというよりは、サブプライムローン債権の劣化によってサブプライムローン証券化した物を含む債務担保証券CDO)が市場でほとんど流通しなくなり、そのため欧米を主体とした世界の金融産業で起こった流動性の不足による巨大な資金不足にある。故に市場に滞貨するCDDをいったん回収しサブプライムローンという毒をデトックスしたうえで市場に還流するという作業が必要なのであるが、市場に流通していたCDOの額が巨大であるため根本的な解決がなされず、金融市場に資金を大量に流し込むこという対症療法を続けているのだが、これは傷口が開いたままの重症患者に対して止血手術をしないままに輸血を続けているようなもので、いずれは輸血のための資金が底を尽いてくるだろうし、いっぽうでは開いた傷口から流れ出た資金が過剰流動性となって、世界の市場を荒らしまくる投機資金となっている。
(次に来るもの)
サブプライム問題だけでも克服困難な世界経済に対する試練であるのだが、その次に待っているのはより凶悪なアメリカ住宅不動産市場の価格下落である。一説によると来年のアメリカ住宅市場の資産価値の低下は邦貨で130兆円を上まわると言われている。米住宅価格、来年7%下落の見通し=全米市長会議:ロイター アメリカの人口は約3億人だが、この価格下落によってわずか一年間で国民一人当たり43万円余りの資産が失われるということになる。3人家族で100万円を軽く超える資産価値の喪失である。これでアメリカにリセッションが来ないと誰が言えるだろうか。世界の主要国は今、アメリカ経済の失速を防ぐため手をつないでいるだろうと推測するのは難しいことではない。
(日本経済と今回の信用危機)
ぶっちゃけ円高が今の水準で留まっているのを不思議に思わないやつは、想像力と現状認識のどちらも欠如しているといっていいだろう。世界の主要国であり、しかも経済規模でアメリカに次ぐダントツのナンバー2である日本は、唯一といっていいくらいサブプライムによるクレジットクランチの影響をほとんど受けていないのである。確かに経済成長率こそ低いが、確実に経済は伸びており、優れた国際競争力を持つ企業が多数あり、世界の基幹工業部品の生産基地として揺るぎない地位を確立し、巨額な国際収支による黒字を溜め込んで潤沢な資金を持つ日本の円が、この世界の主要国の金融がぐらぐらゆれ続け弱りまくっているときになんで高騰しないか、どう見たっておかしいではないか。円がこれ以上高くならないのはドルへの信認を守るため、それだけである。円高になれば世界中の資金が日本に流れ込んでくる。今世界の中でもっとも安全な投資対象は日本なのだから。そうなったときアメリカ経済はドル離れによる資本不足で崩壊してしまうかもしれない、というかするだろう。もともと日本はアメリカ経済を支えるために、巨額の資金を米国債に投資し自国は円安株安低成長を甘んじて受け続けていたのだからいまさらその政策を止める気はないのだが、その対米経済追従政策の異様さが今回の金融危機でくっきりと浮かび上がってきたということだろう。

しかし、サブプライム問題の根本解決もできないようでは、来年確実にアメリカのリセッションは来るだろうし、世界経済はそれに耐えることはできないだろうな。エネルギー価格が高止まりなままだと中国経済も破綻するし(なぜなら中国経済は元高に耐えられないことがはっきりしてきた。かの国の産業は価格訴求一直線であり、付加価値の創造という部分をまったく持っていないから、環境の変化に対応できないのが今回の元高で見えてきた。)、BRICS諸国は世界経済に組み込まれてこその高成長なのだから、その中心にあるアメリカ経済が失速すれば仲良く失速することになるだろう。