アルカイダ系武装組織ファタハ・イスラムがパレスティナ難民キャンプに立て篭もって、レバノン政府軍と戦闘を続けている状況が続いていますが、弱体とみられていたレバノン政府軍が意外とがんばっていて、ファタハに対して降伏か死かと迫っている模様です。
レバノン国防相「投降か、死か」 武装組織に通告:朝日新聞
このファタハ・イスラムはアルカイダ系といわれていますが、どうやら背後ににシリアの影があるようです。
レバノン軍による掃討作戦、4日目に突入:世界日報
一方、レバノン軍のサミール・ジャジャ高級委員会議長は23日、ビズマールで記者会見し、ファタハ・イスラムは、シリアと密接な関連がある、と指摘した。
その理由として、1.ファタハ・イスラムは、シリアが支援してきた「ファタハ・インティファーダ」に属していること、2.シリアは、ファタハ・イスラムの責任者だったシャケル・エル・アブスィをなぜか、牢獄から解放したこと、3.ファタハ・イスラムの真の指導者アボ・マディーン氏は、シリアの諜報組織に属する諜報員だったこと、などを挙げた。
なぜシリアが背後で動いているかといえば、ハリリ元レバノン首相暗殺事件に絡んでシニオラレバノン首相が「ハリリ元首相暗殺事件を裁く国際特別法廷の早急の設置」を求める書簡を国連事務総長に送っており、米英仏もこれを支持する表明を行っているという一連の動きがあるからです。
ハリリ元首相暗殺事件、米英仏が国際特別法廷の設置求める決議案を提出へ :AFP
ハリリ元首相の暗殺へのシリアの関与はもう真っ黒、法廷が開かれると追加制裁措置やら何やらでシリアは政治・経済的に苦境に陥ることは間違いないところです。シリアはそれを回避するため、親シリアイスラム原理主義武装集団であるヒズボラを使って、昨年よりベイルートで連日シニオラ内閣退陣を要求するデモを続けていたわけですが、半年あまりにわたる工作にもかかわらず国際的に支持を受けているシニオラ内閣は健在で、かといって国連軍が多数駐留している状況下でヒズボラが武力を持って政権打倒とかいう非常手段など取れるわけもありません。そこでシリアとしては、配下の武装集団ファタハ・イスラムや爆弾テロを使いレバノンの治安を混乱状況に落とし、シニオラ内閣の治安能力に疑問符をつけることで追い落としを図ろうとしているように思われます。で、シリアにとって予想外だったのは、意外とレバノン軍ががんばったことと、アルカイダ系といわれるファタハ・イスラムへのパレスティナ難民諸勢力の支持がなかったことでしょう。いってみればシリアは自爆しちゃったっていう事ですね。こうなってくると、この混乱した事態に何の対応もしてこなかったヒズボラの、レバノンでの立場というのにも何らかの変化が見られることになるでしょう。またまたイスラエルへのロケット弾攻撃が復活する恐れも充分ありますね。しかし果たして柳の下に2匹目の泥鰌はいるのでしょうか。藪をつついて蛇を出すことになりかねない恐れがあるのですが。