龍神沼の自由帳

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最上型の運荷機能

 艦前半部に主砲塔を集中した最上型軽巡洋艦は、空いたスペースとなった艦後半部分を艦載艇の搭載区画に充てていた。固有の艦載艇である内火艇やカッター、物資輸送にも兼用できる小発を搭載するほかに、大型の運荷艇を4隻搭載運用する能力を与えられていた。これらの搭載艇の一部はデリックで発進収容したが、大型運荷艇を含むそのほとんどは海面まで傾斜した艦尾に敷かれた2組の軌条を使って発進する機構になっていた。
 大型運荷艇は自重60トン貨物積載能力は約40トンで速力12ノット、艇首に歩板を持ち完全武装の兵員250名もしくは97式中戦車2両の揚陸が可能だった。大型運荷艇の代わりに特型運荷船(陸軍が開発した大発)6〜8隻を搭載することもできた。また最上型完成当時開発中であった特殊潜航艇甲標的を6隻搭載することも可能だった。
 艦政本部は最上型の大きな舟艇輸送能力に着目し、局地防衛用の小型潜水艦の開発に着手する。要撃任務専任の基準排水量350トン水中速力20ノット水上速力5ノット、53cm魚雷発射管2門魚雷4本を持つ波11型潜水艦がそれである。この型は、回航用の小型ディーゼルエンジンこそ持つものの、基本的に艦内の大部分を占める大量の蓄電池からの電力でモーターを回す、水中からの襲撃に特化した潜水艦であり、交戦海域への展開は当初最上型巡洋艦による輸送を考えていた。その後ドック型の専用輸送艦が就役した為、実際に最上型による輸送が行われることは無かった。*1

*1:最上型で波11型を運用する場合、その艦尾に大幅な改造が必要だったと思われる