龍神沼の自由帳

気が向いたら更新しますわ

中国を軸としたビジネスモデルの崩壊

サブプライム問題から発生した欧米の信用不安の影響が拡大する中で見過ごされがちになっているが、中国の,東アジア圏に置ける生産基地としての条件の悪化による、従来型の中国を軸とした投資モデルの無効化が進んでおり、アジア各地の華僑投資家による大陸への投資からの利益の回収が見込めない状況が多く現出している。無効化の主たる要因としては、人民元の為替レートの上昇、人件費の高騰、世界的な資源インフレによる生産コストの増大が低人件費の効果を上回るほど無視できないものになってきたこと、功利性のみを追求する工業化によって引き起こされた環境破壊や、人治主義的共産主義政権によって引き起こされる産業政策の恣意的変更や賄賂の増大、辺境地区の反政府運動、社会的格差の増大による民衆の反社会的行動の増加等の社会的コストの増大などが数えられる。この結果、中国本土において競争力を失った多数の工場が閉鎖され、海外の投資家達は投下した資本を回収できぬまま撤退を余儀なくされている事例が多い。
このことから香港*1・台湾の中国人資本家や、シンガポールその他のアセアン諸国の華僑系資本家によって中国本土に大量に投資された資本の多くが毀損してしまっている可能性が考えられる。そこにほぼ同時性を持ってサブプライムローン由来の金融危機と世界的リセッションが発生している現状は、中国経済の低迷と東アジア圏における資本の不足として顕在化してくることになるだろう。2000年前後から続いていた中国を中心とした東アジア圏の経済発展は、上記の理由により欧米の信用不安により作り出された世界的リセッションの発生と同時に終わりを告げることになる。これから起こる経済の停滞の中で中国は、今まで等閑視されていた環境保全や内陸農村部を中心に不満の高まっている国内格差等の解消のために多くの資本を投下する必要に迫られている。低人件費と為替レートに守られていた生産性の低い低付加価値の工業、国営企業を中心として多額の不良債権を抱え込まされている金融機関、大量の農業人口を擁しながら低い生産力の農業、肥大化し続ける軍事予算と発言力を増す軍部、地方行政府の腐敗と閥族化、中国全土を覆う拝金主義、言わずもがなの環境の破壊と汚染、少子化による高齢化の波、とこれから国際貿易での成功モデルが機能しなくなっていく状況でいくらでも数え上げられる負の要因、もはや中国に乗っかった形での東アジアの経済発展など儚い夢となってしまった。これをして中華経済圏バブルの終焉と名づけてみる。結局中国を中心とした東アジアの経済発展とは、アメリカの過剰消費と中国の政策的低賃金低為替レートによって引き起こされた只のバブルだったといえるだろう。

*1:この場合香港を経済的な主体として考え、中国本土からほぼ独立したものとみなしている