龍神沼の自由帳

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イラクのベトナム化

 かつてアメリカは国内世論に押され南ベトナムから撤兵した。アメリカ軍の任務を南ベトナム政府軍に肩代わりさせるいわゆるベトナム化政策を進めた上である。しかしその結果は南ベトナム北ベトナムへの軍事併合を招いただけだった。今のアメリカでのイラク政策見直し論議には、かつての苦い経験に敢えて目をつぶり自らの痛みを解消しようという、アメリカのエゴイズムしか見えない。アメリカはイラクで流される自国民の血に耐え、あらゆる手段をもってしてもイラクの恒久的平和を実現する責務がある。アメリカはイラクから逃げ出すことは許されない。なぜならインドシナ半島と違い中東で起こる混迷は世界経済にあまりに多くの影響を与えるからだ。さらにはアメリカの影響力がなくなったインドシナ半島で起こった悲劇が中東で再び引き起こされることを防ぐためにも。

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 ところで、アメリカがイラクでずぶずぶの泥沼にはまった状況をしてイラクベトナム化と表現する向きがあるが、ベトナム戦争北ベトナムとその傀儡である南ベトナム解放戦線による侵略戦争であり、アメリカの敵もベトコンと北ベトナム正規軍という統制された軍隊であり、イラクのように宗教や部族さらには民族によって勢力が細分化され、加えてアルカイダ等の過激派宗教組織が介入してくるというまさにカオスな状況とはだいぶ違う。どちらかというと今のイラクは、かつてアメリカを中心とする多国籍軍が撤退する以前のソマリアみたいになりかけているのではないだろうか。あるいはソビエトが侵攻した当時のアフガニスタンか。