龍神沼の自由帳

気が向いたら更新しますわ

覇者の戦塵の貧乏臭さ

 最初は資源を持たない日本が、石油を手に入れることによりどう世界が動いていくか、みたいな話だったような気がするんですが、巻を重ねても日本が石油もちになって少しはビンボから脱却できましたよ、的な話にはなりませんでした。日中戦争を回避し石油は自前で何とかなる、なのに相変わらず貧乏な軍隊です。一点豪華主義海兵隊はミッドウエイに97式中戦車しか持ち込めないし、陸軍だって数の上での主力戦車は依然としてチハ系だし*1、設営部隊だって陸海軍とも基本的には人力が主力で、機械化された部隊ははるばる満州から連れてこなければならないという始末です。日中戦争がなくなった分で浮いた戦費はどうやら満州にどんどんつぎ込まれたみたいで、満州国のインフラは発展しその民衆にも恩恵がまわっているようです。これは戦後日本の経済発展の形が、満州国に置き換えられたものと思われ、戦塵の将来的ストーリーにも大きく影響していくでしょう。
 日本軍もある程度は恩恵を受けているんですが*2、作者の趣味なのか戦塵世界の日本軍は各所で貧乏臭い戦争をしています。ノモンハンで活躍するのは鹵獲されたソ連軍戦車で編成された戦車中隊だし、北太平洋で決定的戦果を上げたのは迷い込んだのを鹵獲したシュツルモビクでした。東太平洋海戦では、ミッドウエイ防衛の為廃品利用の対空機関砲座や有り合わせで作った照準器が活躍するし、電探照準の高射砲も現地での応急措置で改造した兵器だし、唯一の機甲戦力は陸軍からのお下がりのすでに旧式化した97式中戦車だったりで、また海戦で活躍したのも雷撃力こそ強力だけど既に旧式化しつつあった特型駆逐艦や廉価な水中戦力の甲標的でした。さらにミッドウエイ撤退時には使えるものから使えないものまで根こそぎ持って帰るしと、もったいないの神様が大喜びしそうな節約精神の大発揮です。その後の展開でも相変わらずで、特殊潜航艇蛟龍や奮進弾装備の隼、鹵獲艦改造の哨戒艇や戦時急造の丁型駆逐艦や米軍から分捕ったLVTがニューギニア方面で奮戦し、インド洋では商船改造の空母や仮装巡洋艦が英海軍を翻弄、大戦果を上げています。インド洋では新型機も登場しますが、こいつも実は用兵構想が放棄されたことから不要になった兵器の再利用だったりとチープさ満点です。更に最新刊では(といっても一年以上前の話ですが('A`))いよいよ節約精神が嵩じて、米軍から最新兵器をかっぱらってしまいます。*3
 いつまでたっても新型艦戦は登場しないし、新型空母もなにを建造しているのかさっぱりわからないしと、特に海軍のほうは*4相変わらずの贅沢は敵だ的状況におかれたままで戦争していますが、そろそろマリアナ決戦が目前に迫ってきていますので、これからは新兵器やら大型戦闘艦やらがわらわらと出てきそうな展開になりそうですね。*5それにしても甲州先生は、修理とか回収とか再利用とか強奪とかが本当に好きですが、始末屋の家系に生まれたんでしょうかね。

*1:さすがに95式軽戦車が主装備なんて事はないけど

*2:主に海兵隊とか陸軍の機甲戦力とか海軍の強化された輸送能力とか

*3:ついでにブルドーザーも強奪していましたね

*4:陸軍は最近贅沢してます、まともに動く疾風とか飛燕、4式砲戦車ってなにそれとかいうぐらい

*5:そんな展開がが嫌で新刊が出てないとかは無しの方向で