烈海の艨艟を最初から読んだ人なら既に気が付いていると思いますが*1、この仮想戦史、出だしのところでいきなり蹴躓いています。ユトランド沖海戦に参加した日本海軍の水雷戦隊、この話自体がある事情からほとんどあり得ないものなのです。
この海戦に参加した日本海軍の水雷戦隊について参加隻数とか艦名について具体的な情報は一切出ていませんが、これは実は書かなかったのではなくて書けなかったのです。なぜならその当時日本海軍には、水雷戦隊を編成できるようなまともな駆逐艦がほとんど存在していなかったからです。日露戦争時水雷艇に毛の生えたような駆逐艦を大量に建造、さらにロシアからの鹵獲駆逐艦を加え、とりあえず大戦前の日本海軍は名前だけは駆逐艦と呼べるものを多数保有していました。しかし大戦前、列強海軍は1000t前後の航洋性の高い大型駆逐艦の建造に乗り出しました。当然日本海軍もそれに合わせた大型駆逐艦を多数建造したかったのですが、そこは所詮2等国家の貧乏海軍、折からの弩級艦建艦競争のなかで戦艦*2を建造するのが精一杯でした。巡洋艦でさえあまり建造できていない状況では、補助戦闘艦艇についてはほとんど予算が付かないうえ技術的にも遅れをとっていた事も有り、大戦前に建造できた近代的駆逐艦はわずか4隻だけでした。
これは大戦に入ってからも状況に変りはなく、1916年のユトランド海戦時でも一等駆逐艦3隻2等駆逐艦12隻の計15隻しか保有していませんでした。*3しかも樺型のうち8隻は地中海での船団護衛任務に就いており、これはこれで艦隊決戦に参加するよりは余程意義のある任務なので外すわけにもいかずで、史実通りならユトランド海戦に派遣できる駆逐艦はほんの僅かしか存在していなかったのです。
いずれは日露戦争くらいまで遡って、ユトランド海戦に参加する水雷戦隊をなんとか調達するつもりですが、その前に今進行している話を開戦直前くらいまでは持っていこうと考えています。もちろん開戦劈頭真珠湾を奇襲するのはお約束ですが、第二次世界大戦勃発時、訪問先の欧州で政略に巻き込まれる摂津をはじめとする遠洋練習航海艦隊、なんていう設定もおもしろそうですね。開戦までの日本海軍年表作ってみるかな。