龍神沼の自由帳

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上海事変の戦訓

 機動輸送艦としての初陣ともいえる上海事変において、天龍型は輸送作戦においては期待通りの実績を残した。しかし戦闘の激化により陸戦隊の依頼で沿岸部の戦闘の支援作戦を行った際、種々の問題が生じ充分な支援戦闘を実施することができず、いくつかの課題を改善項目として抱えることになる。先ず第一に、地上部隊との連携において双方の通信設備等の不備から円滑な連絡が取れず、作戦の遂行に支障をきたしたことが上げられる。陸戦隊からの支援砲撃の依頼は、戦隊司令部に届くまでに幾つもの部署を経由することになり、即応した有効な支援の実施の大きな障害となった。また砲撃の際の弾着観測についても同様の理由から艦からの目視でしか確認できず、誤爆になりかけたことも何例か数えられている。水上機母艦能登呂の所属機を使っての観測も途中実施されたが、こちらも通信能力の不足から充分に機能したとはいえなかった。また、当時天龍龍田の主砲弾は対艦用の榴弾しか準備しておらず、敵地上戦力に対して有効な打撃を与えていないことが事変後の調査により明らかになった。