龍神沼の自由帳

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横山信義『海の牙城』サイパン沖海戦を予想する、其の3

 [戦闘経過5]米戦艦部隊は要塞砲の射程から抜け出すまでに半数の戦艦を喪った。随伴していた艦のうち巡洋艦3隻と駆逐艦9隻もサイパン近海にその姿を消している。敗残の艦隊は、応急修理を続けながら上陸部隊との合流を図った。戦艦部隊の後方では、6隻の護衛空母が護衛の艦艇とともに戦艦部隊の退却の支援を行っている。この時点でマリアナ方面の日本軍基地航空兵力は米機動部隊からも戦艦部隊からも、そしていまだに攻撃圏に達していない上陸支援部隊からもフリーになっていた。最初に攻撃を受けたのは10隻あまりの護衛艦で守られていた護衛空母任務群だった。度重なる米軍の攻撃の間、掩体濠に守られたまま待機を続けていた200機からなる艦攻と艦爆、それに飛行場防衛の任務から外された120機の戦闘機を加えた航空打撃戦力が、その牙を米艦隊に向けて剥きだしたのだ。わずか15分間足らずの攻撃で護衛空母たちは無力化された。最後まで浮かんでいた空母が浸水に耐え切れず横転したころ、いまや艦隊速力15ノットが精一杯になってしまった高速戦艦部隊の頭上に、彗星、天山で編成された攻撃部隊が現れる。半日前、世界最強の戦力を誇っていた戦艦群がその姿を消し去ったのは、その3時間後だった。
 [戦闘経過6]マリアナ砲撃作戦が失敗に終った頃、前日つかなかった決着をつけるべく日米機動部隊は互いに攻撃隊を発進させていた。この日稼動していた空母は米軍8隻日本軍10隻、戦力的にはほぼ互角だったが、日本軍の戦列から前日敵の攻撃を吸収し続けた信濃大鳳が、共に大損傷を受けて消えている。米軍機に比べ脆弱な日本軍機は前日の戦闘で多くが損傷を受けてその稼動機数は大幅に落ちており、防御面においても攻撃力においても自軍有利と米機動部隊司令部は認識していた。実際には前日夕方近くに日本軍機動部隊は長駆補充された予備戦力によって定数いっぱいの搭載機数を揃えていた。この日最初の戦闘で半数の空母が無力化された後、米軍は作戦の全面的な中止を決定した。米軍攻撃部隊もこの戦闘で日本軍の空母6隻に損害を与えていた為、撤退戦に関しては問題はないと米軍は判断していたが、小笠原方面やパラオ方面さらにはトラック島から、マリアナ諸島を中継補給地点とすることで日本軍攻撃部隊が米機動部隊に次々と攻撃をかけてきた。二日間にわたる戦闘によって、米機動部隊は12隻の空母と9隻の巡洋艦駆逐艦11隻を喪失した。日本艦隊が失った空母は正規空母1隻と軽空母2隻、損傷空母は9隻を数えたが、10月には正規空母4隻と戦艦改造空母が2隻戦列に加わり、更に損傷艦も修理が完了している。同月20日日本海軍は空母18隻と戦艦5隻を主力とする大艦隊をトラックから出撃させ、マーシャル諸島奪還作戦を開始した。
 以上、大甘な予想でした。