龍神沼の自由帳

気が向いたら更新しますわ

経済成長至上主義の終焉

まず結論から、資源や環境を考えると製造業を主体とした経済発展は早晩行き詰るのは確実だ。エネルギー面や資源確保における画期的なブレイクスルーも、現状の経済成長の延長線上では考えにくい。なぜならそこにかかる研究開発コストは膨大なもので、一民間企業どころか一国を上げての投資でもおそらく賄いきれるものではないからだ。そしてそこから導かれるのは、画期的な新技術によって低コストのエネルギーが生み出されることは無く、また未利用埋蔵資源の開発には膨大なコストがかかるということだ。一方で新興諸国を急激な工業化の嵐に叩き込む形で続いている現状の世界的経済発展は、新興国の自然環境や社会構造を急速に破壊している。低コストの工業製品を濫造することによって得られる利潤よりも、それによった破壊されていく環境と社会を復旧するためのコスト、負の利潤のほうが実際には遥かに大きく、それはまたその国一国だけではなく地球環境にも大きなダメージを与えつつある。そして顕在化しつつあるその負のコストが、新興諸国の政治経済に回復不能のダメージを与えるのもそう遠くない日のことだろう。龍神沼の考えるところでは、従来型の経済発展は既に臨界点に達しつつある。その先に待っているものは新たな形での南北対立、負のコストを先進諸国に負担させようという後発諸国と自己責任を主張する先進国との不毛な対話と対立だろう。一方で進む食糧エネルギー等の資源の囲い込みは、軍事力の直接行使を伴う危うさを抱合すると考えられる。このまま現状型の経済成長至上主義が続けば、おそらく早晩グローバリズムは逆方向に動き出し、世界の貿易量は減少世界経済は縮小に向うことになるだろう。
では先進諸国が新興工業国と痛みを分かち合えるか、生産の移転と共に環境保護技術、公害対策技術や環境復元事業への出費等のコストをかけることができるか、といえばおそらく答えはNOだろう。人件費が低コストだから企業が海外進出している、と常識として単純に捉えることは誤謬である。実際企業が海外進出するのは、自国で生産するよりも進出先のインフラにかかるコストが遥かに低いためであるからだ。環境対策、周辺住民への補償、電力や水のコスト、さらに進出先の国や自治体からの税制上の優遇等、実際には人件費のファクターよりもこれらにかかるコストの低さが企業をして海外進出させる大きな要因として働いているのだ。それらの要因がないのなら、あらゆる工業インフラが整っている日本に海外から低コストの労働者を呼び込むほうが、輸送インフラ等も含めれば遥かに優位に立つことができる。自民党政権における企業の政治力等を考えると、移民でない労働者の移入であればそれを政府に認めさせる敷居は低かっただろう。要は新しい生産拠点を立ち上げる際、新興工業国に工場を作るほうが遥かに安くつく、そしてその低コストは進出先の国民や環境の痛みによって賄われているということで、いずれそれは国際問題として浮かび上がってくるだろう*1
 
 
とまあ、世界不況の脱出のためには景気を刺激して経済成長すればいいじゃん、とか言ってる各国政府ですが、無理にドライブかければ終わりの始まりが早まるだけですよ、ってこってす。この停滞期をいい機会と思って、地球環境にやさしい成長戦略を考えてみてはいかがですか。
龍神沼的成長戦略は、現在煮つめている最中ですよっと。

*1:いや既に顕在化しているか