龍神沼の自由帳

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巡洋戦艦「浅間」北米決戦〈2〉

パナマ運河の閉塞は、北米大陸の陸上輸送網に大きな負荷をかけることとなった。鉄道貨物による輸送はインフラ上の制限から大幅に増強することが困難であり、道路輸送に於いても如何に米国が自動車大国で道路網が整備されていると雖もその輸送力の増大には限界があり、また増強するための人的物的コストも米国の国力を消耗させるほどの大きな負担となっていった。特に西海岸の工業力の多くはパナマを使っての資材や原料の輸送に頼るところが大きかったため、その生産力は軍用機や艦艇などの軍需製品も含めて大きく減少することになる。
ここにおいて対同盟戦遂行の切り札とも言える戦略爆撃機の生産が減少することは、米国勝利への道程に大きな暗雲をかざすことにつながるため、米国指導部はB36の生産維持のためあらゆる手段を行使する決意を示した。車両輸送、鉄道輸送、さらには航空機による輸送、西海岸に集中する米航空機工場への資材の輸送は何者にも優先されることになる。また西海岸の防空網は、同盟軍戦略爆撃機による航空機工場の破壊を阻止すべく格段に強化された。その一方で、爆撃等による被害を避けるため航空機工場のロッキー以東への移転が防空網の強化と同時に実施されている。
パナマ閉鎖と同盟軍の戦略爆撃機による米本土空襲は、以上のように米国の軍事及び産業に大きく影響を与えたが、それはまた特に西海岸を中心とした生活物資の不足を招き、米国国民の厭戦気分に拍車をかけ、それをもたらした米国大統領への支持率は危険なほどに低下していく。ここに来て米国は、戦争による敗北を待たずして自壊の道を辿り始めたのだった。