龍神沼の自由帳

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海の牙城3巻本土強襲を再度予想する 其の壱

 めんどくさくなってきました。
 時期はサイパン沖海戦から3〜4ヵ月後、連合艦隊はハワイ奇襲のため、再び単冠湾に集結中。航空母艦15隻、高速戦艦2隻、重巡8隻、防空巡5隻、軽巡1隻、艦隊型駆逐艦30隻、防空駆逐艦8隻、其の他補給艦船など15隻を含む大艦隊だった。米海軍のマリアナ攻略作戦に合わせて後方の真珠湾を攻撃、兵站機能を破壊し米軍の継戦能力を一時的に麻痺させ、マリアナ攻略で消耗した米機動部隊に決戦を挑む構想である。
 一方米海軍も真珠湾にその主力艦隊を集結させていた。狙いは日本海軍と同じ、マリアナ諸島への補給線を大元から断つための作戦だった。攻撃目標は横須賀港、そして敵国の首都東京だ。日本軍の哨戒パターンを観測しその間隙を縫って横須賀港を奇襲、余勢を駆って東京を空襲、日本国家の抗戦意欲を喪失させることも目的に入っていた。さらにいったん後方に下がって補給を終えた後、小笠原方面の航空戦力を撃滅、そのままマリアナ攻略線につなげる大作戦を計画していた。真珠湾を出撃した艦隊は空母16隻、戦艦3隻、就役して間もないアラスカ級巡洋艦2隻を含む巡洋艦15隻、駆逐艦38隻、さらに支援艦隊30隻余りが後方に控えていた。
 米機動部隊は攻撃予定日の2日前、機関故障のため哨戒地点への進出が遅れていた波号潜水艦に偶然発見されてしまう。迎撃態勢を整える陸海軍だったが、最大の攻撃力を保有する第一機動艦隊はすでに真珠湾に向かって出撃しており、米機動部隊への攻撃は不可能になっていた。横須賀港に在った艦船は全艦退避、呉から出撃した艦隊と合流した。戦艦1、空母3、巡洋艦9、駆逐艦17隻で急遽編成された艦隊は米機動部隊の攻撃範囲内から逃れるべく機動する。日本本土に配置されていた航空戦力は防空戦闘機や哨戒機が主であり、対艦攻撃力を持つ部隊は限られていた。そのため迎撃作戦は防空戦が主体となった。攻撃可能な戦力は一時的に敵攻撃圏外に退避、反撃の機会を窺う。
 米軍は攻撃部隊の前面に大量の戦闘機が立ちふさがるまで奇襲の成功を疑っていなかった。そして強襲となった横須賀空襲は双方の戦闘機による大規模な編隊空戦を持って開始された。戦力の集中という面で米軍は優勢だった。高性能戦闘機のほとんどを前線に配置していた陸海軍は、首都防空部隊と一部の新型機を除けばほとんどの戦闘機が二線級の機体であり、苦戦は免れなかった。横須賀に唯一存在する軍艦である三笠を含め、横須賀港の港湾機能、横須賀工廠、其の他陸上施設は次々とその機能を失っていった。一方米軍の航空戦力もまた無傷というわけには行かなかった。柱島空襲の反省を受けて各軍港の防空体制は著しく強化されており、横須賀港もまた大量の高射砲や機銃でハリネズミのごとくその防御体制を強化されていた。また大量に飛び立った陸海軍の戦闘機は、その性能で圧倒するコルセアやヘルキャットに苦しみながらも、米機動部隊の戦力を確実に削り取っていった。
 横須賀に大打撃を与えた米軍は、その矛先を帝都東京に向ける。戦術的には意味が無い、ただアメリカ合衆国の力を見せ付ける為だけのデモンストレーション。いわば政治の為の儀式といってもいい戦いでも、日米はお互いその血を流し続ける。一千機を越える艦載機を擁していた米機動部隊は、皇居から国会議事堂と日本の中枢部を瓦礫の山に変えていく戦いを終えたとき、その稼動機を半減させていた。